日本のライブコマース市場は今後どうなる?中国と比較した日本の課題や成功させるためのポイントを徹底解説

近年、新型コロナウイルス感染拡大の影響による商品購入プロセスの変化やリアルタイム配信がスムーズに視聴できるネット環境が整ってきていることから、日本でもライブコマースに本格参入する企業が増えてきています。

しかしながら、

「中国では流行っているけど、日本の市場はどうなんだろう?」

「終了したサービスも多いと聞くけど、これから伸びていくの?」

「参入すべきか判断に迷う……」

と、ライブコマースの実施を悩む方も多いのではないでしょうか?

今回は、日本におけるライブコマース市場や課題、成功させるためのポイントなどについて詳しく解説します。

この記事がライブコマース実施判断の参考になれば幸いです。

アジア10都市と比較した日本のライブコマース市場

トランスコスモス社の「アジア 10都市オンラインショッピング利用調査 2021」によると、アジア各都市のライブコマースの認知および利用経験について、東京以外の9都市では認知度が7割以上となりました。

東京は他都市と比べてライブコマースの認知度・利用率ともに低く、特に購入経験がある割合はわずか5.9%と、10都市の中でも著しく低い結果に。

東京では購入はしていないが認知している割合が7.8%、名前だけは聞いたことがある人が20.3%、名前を聞いたこともないという人が一番多く65.9%という結果でした。

アジア各国においてライブコマースは新しい販売手法として定着しつつある中、日本のライブコマース市場は発展途上と言えるでしょう。

出所
「ライブコマース」認知度・利用経験とも東京が最下位――トランスコスモスがアジア10都市で調査

日本のライブコマース市場の伸び悩み期

日本のライブコマースの元年は2017年とされていますが、多くの企業がライブコマースサービスを始めたものの2020年までに終了しています。

Laffy(DeNA)

2017年4月にサービス提供開始、2018年3月に終了。

メルカリチャンネル

2017年7月にサービス提供開始、2019年7月に終了。

BASEライブ

2017年9月にサービス提供開始、2020年3月に終了。

Yahoo!ショッピングLIVE

2017年11月にサービス提供開始、2020年6月にサービス終了を発表。

Rakuten Live

2019年5月にサービス提供開始、2021年4月に終了。

このように、大手企業が続々とライブコマースに参入したものの、相次いでライブコマースから撤退する結果となりました。

なぜ日本では伸び悩んだのか?

2020年の中国のライブコマース流通取引総額の予測値は、1兆2,299億元(約22兆1,382億円、1元=約18円)であるのに対し、日本は1,900億円と、ライブコマース市場は中国が大幅リードしています。

中国では日本とだいたい同じ2016年頃からライブコマースサービスが開始されました。

同じくらいの時期からライブコマースサービスが始まったのにもかかわらず、なぜこれほどまで差がついてしまったのでしょうか?

中国と日本の違いから、日本でライブコマースが発展しなかった理由をご説明します。

出所
新たなEC手法として存在感を高めるライブコマース(中国)

実店舗が充実している

日本では、スーパーマーケットやショッピングモール、コンビニエンスストアまで実際の店舗が充実しています。

日本の都市部では少し歩くとコンビニが複数店舗あることも多いですが、北京は中心部でもコンビニを見つけるのは簡単ではありません。

中国では国土が広いこともあり、リアル店舗の整備という段階を飛び越えて、ECが先に発展しました。2020年12月時点で、中国のネットショッピング利用者は7億8200万人。これは、中国全体のネット利用者の79.1%に当たります。

今ある店舗も地価の高騰により維持できなくなってきており、現在多くの店舗が閉店に追い込まれている状況です。

また、中国ではブランド等の偽物が市場に多く出回っており、「買ってみたら偽物だった」ということも発生しやすい状況です。

店舗でのブランド品のすり替えも発生するため、消費者はたとえブランドを信用していたとしても、従業員のことは信用していません。

したがって、他の人の口コミやインターネット上での議論などを見て購入を決める傾向があります。

一方、日本では、日常の買い物を実店舗ですることがほとんど。

商品の品質を厳重に管理しているので、偽物にあたることは非常に稀です。反対に、オンラインで購入するほうが品質が心配だと思う方も多いかもしれません。

また、日本の店舗ではサービスの質も高く、顧客が買い物を楽しめるよう工夫がなされています。

つまり、日本ではライブコマースで買う動機が中国ほどないのです。

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コマーサーが育たない

「コマーサー」とは、ライブコマースに特化したライブ配信者のこと。

”憧れ”や”共感”といったファンの高い熱量を利用して購買に繋げるため、コマーサーにはSNSフォロワー数の多いインフルエンサーを起用するケースが多いです。

しかし、通常のSNS上のインフルエンサーと、ユーザーとコミュニケーションを取りながら商品・サービスの販売を促すことができる配信者は異なります。

商品知識が乏しく視聴者からの質問に答えられなかったり、視聴者に向かって意図せずともネガティブに受け取られる発言をしてしまったり、配信トラブルに上手く対応できなかったりなど、出演者のささいな言動で企業への信頼を失ってしまうことになるでしょう。

また、従来のテレビショッピングと違って、カメラの前で時間内に商品の魅力を一方的に伝えるトーク力だけでは不十分。

ライブコマースは出演者と視聴者のリアルタイムでの双方向コミュニケーションが最大のメリットであるため、質問に正確に回答できる商品知識も必要ですし、コメントを拾いながら視聴者の不安を取り除いて購入を後押しするマーケター視点も重要になってきます。

生配信でやり直しができないので、臨機応変な対応力も求められます。

中国では、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーによるライブコマースが盛んに実施されています。

中国のNo.1 KOLの1人は、薇婭(viya)という女性。元々アパレルのお店を経営していた彼女は2016年に淘宝直播(タオバオライブ)をスタートして、わずか4ヶ月たらずで1億元(日本円約15億円)を売り上げました。

なぜ中国では、KOLを起用したライブコマースが有効なのでしょうか。理由は2つあります。

まず1つ目は、中国ではテレビや新聞などのオールドメディアの影響力が衰えているからです。

日本では雑誌やテレビCMのパワーもまだありますが、中国では休刊に追い込まれた新聞・雑誌や放送を停止したテレビ局が後を絶ちません。日本ほどマーケティング施策の選択肢が多くなく、KOLに頼らざるを得なくなっています。

2つ目は、MCN(Multi Channel Networkの略)の存在です。MCNとは、インフルエンサーと提携し、育成やマネージメント、コンテンツ作成などを行う企業のこと。

日本では、UUUM(ウーム)がその代表的な存在です。UUUMは、YouTubeメインのMCNですが、新型コロナウイルス感染症の流行によるイベント収益の落ち込みと、広告売上の減少により、苦戦しています。

一方、中国MCNは、広告だけではなく、IP(知的財産)商品の開発やプロモーション商品の販売収入のレベニューシェア、バラエティー番組の出演など、多角的なビジネスを実施する体制が日本よりも整っています。

ディレクターやカメラマン、エディターやスクリプターなど、専門職の人がチームでKOLをサポートする体制が整っており、質の高いコンテンツを作ることができます。

日本では、KOLマーケティングはたくさんあるマーケティング施策の一部という認識で、コマーサーを育てる体制が整っていないのです。

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プラットフォームの問題

中国では、大手EC会社が提供するプラットフォームとライブ動画配信プラットフォーム、そしてSNSの大きく分けて3種類のプラットフォームが存在します。

いずれもライブコマースのために新たにアプリをダウンロードするのではなく、数億人が普段から使っているアプリでライブコマースを実施しているため、中国国内で浸透しています。

それに対して日本では、ECと連携したアプリ型のプラットフォームは、新たにアプリをダウンロードするというコストがかかるため、浸透しませんでした。楽天やメルカリ、BASEなどが次々とライブコマースサービスを終了したのはそのためです。

日本でライブコマースを実施する際によく使われているプラットフォームは、YouTubeやInstagramのSNS型のもの。すでに多くの人が集まっているSNSを利用するため集客しやすいというメリットがありますが、EC機能がないため商品購入の際にECサイトに移動する必要があり、離脱が発生してしまいます。

また、日本では、Amazonや楽天などの主要通販サイトに対する満足度が中国と比べて高いので、SNSでライブ配信を視聴しECサイトに遷移するという手間を取りたくないと考える人が多いと考えられるでしょう。

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ライブコマース第二次ブームへ

ご紹介したように、日本国内のライブコマース市場は伸び悩んできましたが、今後日本でもライブコマース市場は確実に成長していくと考えられます。

その理由をご説明します。

新型コロナウイルス感染症の流行

日本は島国のため、かつては疫病の流行の影響を受けることはそこまでありませんでしたが、新型コロナウイルス感染症は猛威を奮い、市場の変化に大きな影響を及ぼしました。

巣ごもり消費が加速し、企業はデジタルシフトを余儀なくされる中、ECサイトはもちろん、ライブコマースを取り入れる企業も徐々に増えてきました。

ライブ配信を行う企業やブランドも多くなり、消費者のライブを見る文化が醸成されつつあります。いくつかデータをお示しします。

日本のライブコマースで使用されるSNSのライブ機能に関する認知度は高まっています。

アライドアーキテクツが2020年12月に行った調査によると、Instagramユーザー全体の76.6%がInstagramライブを認知しています。

また、MMD研究所の調査によると、YouTubeライブの利用者は18%を超え、ライブ配信プラットフォームとして3人に1人は認知していることがわかりました。

企業・ブランド公式SNSの発信にも注目する消費者は増えています。

HERSTORYの調査では、56.1%が週に1回以上、企業/ブランドSNS公式アカウントの動画を視聴。特に10〜30代では約7割が週に1回以上見ていることがわかりました。

購入検討時にSNS投稿動画を参考にした満足度は、「不満/少し不満」という回答が全年代で0%という驚くべき結果に。

出所
「Instagramを見て購買する」ユーザーの実態調査ライブ配信サービスに関する調査SNS投稿動画が購入のきっかけ約6割! 動画で事前確認は、インスタ55.0%

企業のデジタル広告やコミュニケーションの変化

近年、広告のCPC(クリック単価)やCPA(獲得単価)が年々上がっており、消費者の広告慣れが起きてしまっています。

インフルエンサーによるPR投稿も”PR感”や”広告臭”が強いものが多く、消費者に受け入れられにくい状況です。

また、Amazonや楽天で価格比較をし購入できるようになったことから、このブランドだから買いたいといった、ブランドロイヤリティーが薄まっています。

ライブコマースは、リアルタイムで相互コミュニケーションを取れることで、ブランドストーリーや企業の透明性を伝えやすく、信用を得られやすい販売手法と言えるでしょう。

デジタルの発展

日本では2020年3月より5Gの本格的な活用がスタートしました。

遅延なくライブ配信できることから、よりリアルに近いコミュニケーションが取れるようになります。

また、インスタグラムの機能の1つであるIGTVやリールから直接物が買えるようになるアップデートが行われるなど、ライブ視聴側だけではなく配信側のインフラも整いつつあります。

消費者の趣味嗜好や行動変化

SNSが発展し、自分の好きなものを選択し見れるようになったことで、人々の趣味嗜好は多様化しました。

在宅時間が長くなることでインターネット使用率だけでなく、YouTubeをはじめとした動画の視聴時間が長くなっています。

ライブを通してブランドストーリーを伝えることで、可処分時間を獲得できるだけでなく、ブランドロイヤリティーも高めることが可能になるでしょう。

日本でライブコマースを成功させるためには

日本は中国と異なり、いつでもどこでも欲しい”本物の”商品が手に入ります。

中国で流行っているライブコマースをただ模倣すればよいという安易な発想では、失敗に終わってしまいます。

日本でライブコマースを成功させるためのポイントを4つご紹介します。

ライブコマースの特性を活かした企画内容

日本でも多くの企業がライブコマースを実施していますが、商品を売るということにフォーカスしすぎて、“PR感”の強すぎる内容になってしまっています。

手元にあるカンペを読みながら、商品の詳細な情報を一方的に伝えるだけのことも非常に多く、それではライブコマースを実施する意味がありません。

ライブコマースは、文章や写真だけのECサイトでは伝えられない商品の魅力を発信できるだけでなく、視聴者がチャットなどでリアルタイムに質問できるなど、テレビショッピングとは違った双方向のコミュニケーションが特長。

この特長を最大限に活かしつつ、エンタメ要素のある企画で視聴者を楽しませ、購入したいと思うような衝動的な感情変化を作り出す必要があります。

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クリエイティブの質の向上

日本ではテレビショッピングが先行して地位を獲得しているため、スマートフォンで手軽に配信するスタイルのライブコマースでは、撮影技術や演出が素人っぽく消費者の目に映ります。

高クオリティなライブコマースを実施するためには、企画内容に合わせたスペックの機材を用意し、ディレクターやカメラマンなど専門スタッフに依頼する必要があります。

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コマーサーの育成

日本では、ライブ配信はできてもコマースに繋げられる人材が育っていないという課題があります。

コマーサーを育成することで、企業のオンライン接客やライブ配信の質を向上させ、コマースに繋げることが可能になります。

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OMO施策との連動

OMOとは、ECサイト(オンライン)と実店舗(オフライン)を融合させるマーケティング手法のことです。

中国とは異なり、日本ではライブの視聴後、約5割がECで購入し約4割が実店舗で購入しています。

ECでの購買完結だけでなく、OMO施策との連動させるのが効果的と言えるでしょう。

ライブコマースについて相談したいときは

日本のライブコマース市場はまだまだ黎明期ですが、新しい販売手法として大きな可能性を秘めています。

自社でライブコマースに取り組むことに不安を感じられている方は、ぜひ戦略型ライブコマースの「LIVURU」にお問い合わせください。

これまで、150以上のライブを企画、実行してきた経験を元に、「LIVULU」では集客、販促企画、ライブ体制、演者教育、分析・報告まで、ライブコマースの全体プランニングを一括で行い、PDCAを回し、質の高いライブを提供します。

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